天才!ササキオサム(元 MOON CHILD 佐々木收)
作曲家の筒美京平さんがお亡くなりになって久しい。
数十年の長きにわたり
膨大な数のヒット曲を世に送り出してきた
まさに天才であったが、
今日はもう一人の天才について書きたい。
佐々木收(ササキオサム)...
元MOON CHILDのフロントマンで
ほぼすべての曲を作詞作曲していた
シンガーソングライター。
20年以上前に私を虜にしたこちらは
現役ミュージシャンである。
彼を知ったのはこの曲
「ESCAPE」 / MOON CHILD
40代ぐらいの人は知っているかもしれない。
ともさかりえ主演の
「FIVE」というドラマの主題歌で
1997年にオリコンで一位を獲得した。
私は当時子育て真っ最中で
ドラマは見ていない。
テレビの歌番組で、たまたまこの曲を
聴いたのだが…
これでもか、これでもかと
掴みにかかってくるみごとな構成が
とても印象深かった。
こんな曲作れるのは何者?
(多分ボーカルの人と推測)
とりあえずMOON CHILDというバンド名を
記憶の引き出しにしまい私はまた
いつもの生活を送っていた。
そして数か月後
またこのバンドの別の曲と出会った。
「requiem for the man of nomad」
Moonchild -requiem for the man of nomad
MOON CHILD!(数か月前の記憶と合致)
わずか十数秒のテレビのCMだったが
高度なコード進行のフレーズを聴き
ああ、やっぱりただ者ではなかったと
とんでもない掘り出し物を見つけたように
気持ちが躍りCDを買いに走った。
遡って次々とCDを聴くうちに、
どんどん彼にのめり込んでいった。
まるで熱病におかされたかのように。
そして佐々木收は天才だと確信していく…
Vo. 佐々木收
Dr. 樫山圭
Ba. 渡辺崇尉
Gt. 秋山浩徳(3rdシングルから正式加入)
の4人組。
1996年エイベックスからデビュー。
「Brand New Gear」
デビュー曲とは思えない完成度。
最初から最後まで非の打ちどころがない。
みずみずしい躍動感。
才能ある音楽家の記念すべき門出にふさわしい。
セカンドシングルは 「Over the rainbow」
マイナー調のミドルバラード。
Bメロから高度に展開する。
3rdシングル 「Blue suede shooting star」
MOON CHILD - Blue Suede Shooting Star
ファーストアルバムは
Tambourine(タンバリン)
全13曲…捨て曲なんて一曲も存在しない名盤
若いエネルギーに満ち溢れ
すべての曲が素晴らしい。
このアルバム初めて聴いた時の衝撃は
今も忘れられない。
何しろ手紙を送ったほどなので…
「 瞳とじれば」
ソロになってからファーストアルバムの曲を
ほとんど歌ってくれている
ライブDVDの(オフィシャルサイトで買える)
ダイジェスト動画
THE SASAKI OSAMU BAND Live Digest 2015 4 4@CLUB QUE
ここから第2期
4thシングル「微熱」
気怠い大人の魅力。
スキャットがカッコいい。
2012年のソロライブでセルフカバー
アコギ一本でさらに円熟の味わい。
MOON CHILD「微熱」2012年ササキオサムソロライブ@songlines
そして大ヒット曲となった
「ESCAPE」公式MV
当時凄く売れたらしい。
カラオケでも人気だったようだ。
ドラマ「Five」のタイトルバック
映像と音楽が怖いほどはまっている。
ドラマ『FiVE』(1997年) 主題歌「ESCAPE」 歌:MOON CHILD
島谷ひとみのジャズバージョン
(2007年)
島谷ひとみ ESCAPE 男歌Studio Live 2007
MOON CHILDはカップリング曲のレベルも高くて
「3秒だけ待つ」(ESCAPEのカップリング)
ファンの間でも人気の高い曲の一つ。
ハードボイルド的な世界。
ガラッと雰囲気が変わって
6thシングル「アネモネ」
7thシングルのバラード
「Hallelujah in the snow」
このハレルヤのカップリング曲に注目したい
「冬の虫」
オサムのピアノ弾き語り+秋山君のギター
これ、はっきり言ってジャズ曲だ。
しゃれたメロディーラインがスタンダード
ナンバーのような雰囲気を醸し出しているが
オサムオリジナル。
ヴォーカルはクールでエモーショナル。
痺れる…
こんな事もやってのける彼に
どんどんはまっていった。
セカンドアルバム My Little Red Book
全体的にロック色を前面に打ち出している。
タイトであか抜けた印象の音作り。
ここから第3期
CD買うきっかけになった8thシングル
「Requiem For The Man Of Nomad」
これはジャズファンクと言えばいいのか。
コード展開がたまらない。
一瞬にして飛びついてしまったカッコよさ。
requiem for the man of nomad MOONCHILD 1998 有明レインボーステージ
「Requiem for the man of nomad」 のカップリング曲
「ビューティフルボーイ ビューティフルガール」
バンドセルフプロデュース。
ウクレレ?等を使ってフォーク色を
加えている。
Lovin' spoonful みたいな素敵な曲。
最後のところの宇宙っぽいサウンドは
次のシングルにつながってると感じるのは
私だけ?
9thシングル「フリスビー」
シングルとしては
初のバンドセルフプロデュース 。
掃除機を使ったりして音作りをしたそうだ。
前述の「ビューティフルボーイ
ビューティフルガール」もそうだが
バンドプロデュースの音に
とても魅力を感じる。
そして、このMVは最高にかっこいい。
MVの最後で掃除機も登場する。
「極東少年哀歌」
「フリスビー」のカップリング曲
自虐的歌詞の問題作。
この曲を聴いて初めて
このバンドが浅薄なキャッチコピーや
悪質なレッテル貼りをされていたことを
知った。気の毒になる…
10thシングル「グロリア」
おふざけモードでも
キチンと仕事している。
この頃にはアルバム制作に入っていたよう。
グロリアのカップリングは
「サンサンサン」という曲で
個人的にとても思い入れがある。
この曲はアルバムに収録されている。
だがカップリング曲のほとんどは
音源が入手しづらいのが非常に残念だ。
どれもみな味わい深く
オサムを知るうえで貴重な作品たちだ。
サードアルバムにして実質的なラストアルバム
POP & DECADENCE
ササキオサムの才能が爆発している。
超ベテラン井上鑑をアレンジャーに迎え
タイトルどおりポップと退廃が同居した
バラエティーに富む内容。
打ち込みのファンクから始まって
ロック、ポップ…ゆれ幅が半端ない。
全曲動画貼り付けたいところだが
汗だくのオサムがまぶしすぎる。
「ミスタースプラッシュマン」
MOON CHILD LIVE'99 ミスター・スプラッシュマン
何気に詞が良いストレートなロック。
この曲を聴いていると
いいバンドだったなぁとしみじみ思う。
「マリーのコーヒーカップ」
この素直なメロディーラインと詞は
普遍的な良さがある。
ヴォーカルの響きも心地よい。
MOON CHILD LIVE'99 マリーのコーヒーカップ
「ドンファンの食卓」
キャッチーなファンクナンバー。
詞は凝っててDecadence気味。
タイトルよく考えられてる
「ケセラセララバイ」
リズムがしゃれてて
これもまたキャッチー。
結局、全部キャッチーなんだけど。
MOON CHILD LIVE'99 ケ・セ・ラ・セ・(ラ)・ラ・バ・イ
「自称ルースター男の懺悔 」
哀しく美しい名曲。
「太陽とシーツ 」
スタジオ録音盤でぜひ聴きたい。
天才しか作りえない美しくも鬼気迫る曲。
このアルバムの核となっている気がする。
そして切ない「朝焼けの唄」
何故かエンディングに向かっていきながら
バンドの終焉をイメージしてしまう。
アルバムを最初からこの曲まで聴き終わると
終わったあ…という気分になる。
そのあとの曲はボーナストラックと考えて
自分の中でバランスをつけていた。
サードアルバムの発売と時期を同じくして
解散することをを発表したわけだが
(後に期間限定で再結成する)
約3年間という短い期間に、本当に
たくさんの素晴らしい曲を生み出してきた。
非常に質の高い、そのほぼすべての曲の
作詞作曲をオサムはやってのけてきた。
その圧倒的なソングライティングの能力を
目の当たりにすると、ジャンルとか作風とか
そんなものは些末な事にしか感じられない。
天才はどのようにして出来上がったのか?
オサムに憧れて彼のことが知りたくて
こんな本も買った。
写真やインタビュー満載
この本で彼のすべてを捉えることは
もちろんできなかったけれど…
興味深かったエピソードが
小学校低学年くらいでクラシックの
旋律を構造分析して聴いていたという…
あの強健な作曲力の盤石な土台が
もうこの時形成されていたのかもしれない。
聴いていたというのも印象的で
そのくだりに刺激され「ピーターと狼」の
音楽アニメビデオを買って
当時2歳ぐらいだった娘に見せてみた。
お気に入りの曲を
(オズの魔法使いのDingDongなど)
繰り返し繰り返し聴く子だったので
予想通り喜んで食らいついてきてくれた。
娘はそのまま音楽好きの大人に成長したが
天才にはなっていない…
オサムの幼少期のエピソードや
プロになる道のりは
このサイトで
貴重な動画と、詳しく語られたお話が
とても感慨深い。
解散後は他アーティストへの楽曲提供も始まる。
作曲家として島谷ひとみの
「 A. S. A. P. 」
いい曲…素晴らしいお仕事。
島谷ひとみ A.S.A.P. ~as soon as possible~ (Live 2010)
作詞の共作で
AAAの「Blood On Fire」
AAA - BLOOD on FIRE (Color Coded Lyrics Kan/Rom/Eng)
彼は作詞の評価も高くて
AAA などの他の歌手への詞の提供も多い。
彼の詞に関して強く感じるのは
ドラマを作ってやるぞという
心意気のようなものだ。
ありったけのこだわりと知識を総動員して
魅力的な物語を作ってくれる。
一曲聴いただけで
まるでミュージカルを見てるような錯覚に
とらわれることもよくある。
ただしその言葉の密度ゆえに
歌詞が聞きとれないことも多いが…
私はメロディー重視で曲を聴く人間だったが
彼の詞には、本当にはっとさせられた。
曲における言葉のチョイスの大切さ、
言葉がメロディーに乗ることによって生じる
パワーがあることを
彼の曲に出会って初めて思い知らされた。
MOON CHILD解散後は
同ベーシストの渡辺崇尉と
SCRIPT (スクリプト) を結成。
渡辺も曲作りに加わる。
インディーズからファーストアルバム発表。
Gentleman's Lib
セルフプロデュース。
プログラミングを駆使して
自由で勢いのある作品に仕上がってる。
価値ある一枚だと思うが
配信されていないのが不思議だ。
(2020年12月現在)
新品のCDを買うこともできない。
この中から一曲
「エンドルフィン 」
めくるめく音の洪水に息をのむ。
これこそ彼の空間把握能力の高さ。
気迫があってスキのない美しさ。
MV映像とは異なり
実際はドラムス以外の楽器すべて
二人で演奏している。
次にメジャーから発売のアルバム
SCRIPT IS HERE
前作と違って多くの曲に色々なアレンジャー
の手が加わってしまっている。
ただしこの「 New Power Generation」
という曲はセルフプロデュース 。
抜群の出来だ。
直前の「Theme of NPG 」という35秒の曲と
ひと続きで聴きたい。
MV洒落っ気がある。
この曲、実は
非常に優れたオサムのオリジナルアレンジが
前作 Gentleman's Lib に収録されていている。
私はそちらが大好きで断然お薦めだ。
次もメジャーからアルバム発売
Body Language
「Stripe Blue」 2016年のソロライブより
「Cause you're avoiding sunshine」
オサムのプログラミングが炸裂。
「いじわる」
歌謡曲みたいで本来私の好みではないはずだが…なぜか聴き惚れてしまう。
ソングライティングに一流の風格。
サビで終わりそうなところに
さらに大サビも入って凝った作り。
フルート、スキャットもいい。
インディーズから3作立て続けにアルバム発表
Fantastic or Drastic (2003 .1.24)
Ultimate or Incomplete (2003.5.23)
Nature or Man-made (2003.11.21)
この3部作の中で一番好きだったのが
赤いのに入ってた「Ultimate Machine」
難曲。
ギターはMOONCHILDメンバーの秋山浩徳。
あらためて聴くとやっぱり凄い。
オーケストレーションでも耐えられそうな
複雑かつダイナミックで美しい骨格。
ここへの言葉の乗せ方が神業。
SCRIPTの活動と並行して
カレイドスコープの石田匠と
Ricken’sを結成。
wikiによるとエイベックスが絡んでるような。
アニメ「アイシールド21」エンディング
「 BE FREE」 (2005年)
だいぶ端折ってしまうのだが…
2010年、SCRIPTは最後の作品となる
マキシシングル「コールドブルー」を発表。
「hello my sunshine」
SCRIPTは活動停止し
オサムはソロ活動を開始する。
アルバムもコンスタントに発表。
精力的に活動している。
実は彼の音楽から
しばらく遠ざかってしまっていた。
ところがこのコロナ禍…
彼はいったいどうしているだろうかと
ふと心配になってしまった。
でも調べてみたら動画もたくさんアップされ
配信ライブなどもやっていてちょっと安心した。
再びオサムの音楽を聴き
そして彼に向き合った。
はっきりわかったことがある。
彼への想いは決して変わらないこと。
そして、この感情の源が一体何なのか。
「カザミドリ」 (2014年)
ササキオサム 「カザミドリ」 OSAMU SASAKI weathercock (LIVE
複雑に織りなしながらも
キャッチーなメロディ
恍惚感を誘う叫びのようなフレーズに
私はただ泣くしかなかった。
ササキオサムは間違いなく天才である。
どうしようもないほどのエネルギーで
彼は自分の音を模索し続けてきた。
そんな彼から発せられる響きは
狂おしいほどの歓喜に満ちあふれ美しい。
私は感動を覚えずにはいられない。
あなたは私にとって
同じ時代に生きる最高の芸術家なのだ。
ササキオサム公式ウェブサイト
Osamu Sasaki web site (osamu-sasaki.com)
ササキオサム AWESOME ROCK RECORDS - YouTube
SCRIPT Official Web Site | SCRIPT IS HERE !! (script-is-here.com)